就労ビザの人が退職時にすべきこと

日本の各種制度をよく理解していないために、自分の知らないところで思わぬ不利益を被っていると思われる外国人労働者の方がおられます。退職時に会社の担当者から、どのような手続きが必要かについての説明が十分になされていない可能性があります。正規に手続きをしておかないと後々ご自身の在留資格に影響を及ぼしたり、本来なら請求できるはずのものが時効を迎えて無効になってしまうといったケースもあり得ます。単に知らないでいることと知った上で選ぶ(あるいは選ばない)ことには大きな違いがあります。ここでは労働者本人がするべきことについてまとめます。

①退職証明書を請求する 

次の職場に移る場合や、就労資格証明書交付申請、在留期間更新申請などにおいて、退職証明書の提出が必要なことがあります。つまり自分がいつからいつまでどこの会社でどのような仕事をしていたのかを証明する重要な書類です。(特に職種・入社日・退職日の記載があるもの)。労働基準法の規定により、労働者が請求した場合には、雇用主は必ず発行しなければなりません。

②活動(所属)機関に関する届出をする

活動(所属)機関から離脱・移籍した旨を、退職後14日以内に入国管理局へ届け出ます。これは会社ではなく外国人本人が行う手続きです。 最寄りの地方入管もしくは郵送あるいはインターネットでも手続きが可能です。これを怠ると将来において在留資格の変更申請や更新申請に影響を及ぼす恐れがあります。http://www.moj.go.jp/nyuukokukanri/kouhou/nyuukokukanri10_00014.html

③ 次の職場への入職手続きを始める

退職後就職活動など何もせずに3か月以上経過すると、在留資格取り消しの対象となります。現在の在留資格の期限内まで何もせず自由に日本で生活することが保証されているものではありません。就職活動中に仕事が見つからず在留期限が満了してしまいそうな場合、短期滞在(90日)へ変更できる可能性があります。退職事由が会社都合(退職勧奨や解雇)の場合は資格外活動許可を得ることによって、資格外のアルバイト(週28時間まで)が認められるケースもあります。この許可を得ずにアルバイトすることは認められていません。

④雇用保険の手続きをする

雇用保険に加入していた月が通算して12か月以上あり、就職する意思・能力があるものの、職業に就くことができない場合、雇用保険の基本手当を受けることができます。退職事由が倒産や解雇等の特定受給資格者である場合、あるいは、期間の定めのある労働契約が満了し、かつ当該労働契約の更新がないことにより離職した者(その者が当該更新を希望したにも関わらず、合意が成立しなかった場合に限る)や、正当な理由のある自己都合による退職の場合、給付制限期間がなく雇用保険を受給できます。退職した会社から発行される離職票を持って、住所を管轄するハローワークへ求職の申し込みが必要です。自己都合による退職の場合は給付制限期間は3か月です(2020年4月から2か月に短縮される予定)4週間に一度、就職活動の進捗状況をハローワークにて報告しなければなりません。

⑤帰国もしくは引っ越す場合は転出届を

会社で借り上げていたアパート等から退去し国内の他の場所へ引っ越す場合、転出届が必要です。市町村によっては、前の住居人が転出届を出さないまま帰国してしまい、そのあと同じアパートの同じ部屋に住む人の転入届が受理されないという事態があり、次の人の入居手続きに影響を与えてしまうことがあります。国外転出の場合、次に説明する脱退一時金の請求のおいて、この転出届が必要になりますので、忘れずに行いましょう。転出予定日の14日前から住所地の市役所で行います。 国内転出の場合は郵便局にも郵便物を新住所へ転送するため、転居届を出しておきましょう。オンラインでも受け付けていますが 現在のところ日本語のみです。

⑥脱退一時金を請求する

脱退一時金とは英語でLump-sum withdrawal paymentと言い、年金の保険料掛け捨て防止のために作られた制度です。 https://www.nenkin.go.jp/service/jukyu/tetsuduki/kyotsu/seikyu/20140710.html

国民年金や厚生年金の加入月が6か月以上あり、退職して国外へ転居し、将来日本で労働する見込みがない外国人本人が自分で申請を行います。日本に住所がなくなった日から2年以内に請求しなければ時効となるので注意が必要です。提出書類や添付書類については日本年金機構のパンフレットを参照してください。 https://www.nenkin.go.jp/service/jukyu/todoke/kyotsu/20150406.files/A.pdf 海外からこの手続きを行うのが面倒であれば、転居届と同時に必要書類を準備し住民票の転出(予定)日以降に年金機構に請求書が到着するように手続きすることも可能です。あるいは国内の代理人に依頼することも考慮できます。支給額は国民年金と厚生年金とで計算式が異なります。尚、現在の制度では加入期間が25年から10年へ短縮されており、受給資格を満たしやすくなっていますので、加入期間によっては脱退一時金ではなく老後に老齢年金を受給する方が良い場合も考えられます。