オンラインシステムを使用した在留資格更新許可申請についての一考察

2021年1月と2月に当職は外国人が多く所属する企業(以下「A社」)からの依頼で約130名ほどの更新申請を行った。以下はその記録である。微々たる情報ではあるが、このシステムの利用を検討されている方への参考となれば幸いである。

オンラインシステムについて

詳細については公式HP(http://www.moj.go.jp/isa/applications/guide/onlineshinsei.html)を各自参照して頂きたい。簡単に流れを説明すると、1申請内容を入力→2添付書類&写真アップロード→3申請→4仮受付番号メール→5申請受付番号メール→6結果通知メール→7在留カードを郵送→8新しい在留カードが返送 となる。申請内容にシステム利用者と申請人のメールアドレスを入力する箇所があり、4と5の通知は両方に送られるが、6の結果通知だけはシステム利用者にしか送られてこない。これはおそらくシステム利用者の住所発着の簡易書留でしか在留カードのやり取りが認められていない為と思われる。オンライン申請時においては、手元に在留カードの原本を用意しておく必要はないが、写真はアップロードしないと申請ボタンを押すことができない。写真データそのものを申請人に用意してもらおうかとも考えたが、自分のスマホで撮影したものだと、背景や影などの問題で未承認となる可能性が高くなると判断し、生写真を提出してもらい、当職が事務所でスキャン&リサイズした。

在留資格の種類・申請前の計画

今回依頼を受けた申請は「教育」の更新申請で、A社は各教育員会(主に関東圏)に外国語指導助手を派遣する企業。公立の小中学校で働くという明確な目的がある故に、申請書を窓口に提出したとしても、これまで審査は比較的スムーズに進む傾向であった。出入国在留管理庁から発表されている直近の審査処理期間(http://www.moj.go.jp/isa/content/001339297.pdf)を見ても、教育の更新申請の審査終了までの日数は13.8日とあり、だいたいこの数字が目安になるだろうと目論んでいた。今回このオンラインシステムを利用するにあたり、A社担当者と事前の打ち合わせを重ね、在留期限が切れる人を順番におおむね2か月前から対応することになった。個人情報保護の観点から詳しくは記載できないが、今回の申請対象の外国人(約130名)の国籍は14か国、男女比は4:6、2,30代がかなりの割合を占める。

結果は?

さて、約130名の申請について、結果通知までの日数は平均16.2日で、上記で触れた審査処理期間と大差ない。ここで注目したいのは、 最短で4日、最大で53日というばらつきである。個々の申請人の事情に応じて個別具体的に審査を行うという入管行政において、他者との比較は無意味であるとはいえ、 稼働先(勤務先)の違いはあれど 、同じ所属機関で、「外国語指導助手」という職務内容が同じであったとしても、結果通知までの日数に大きな差が生じている。 特に4週間以上かかった申請人が12名おり、全体と比較してこの数字を多いとみるか少ないとみるべきか、評価が分かれるところであろう。追加の提出書類(納税証明書)の通知があったのは1件のみであるが、この申請人は18日で結果通知を受けた。

標準審査期間以上にかかった理由とは?

では4週間以上かかっている原因について考察したいが、結論から言うと「不明」である。性別・年齢・国籍・居住地・勤続年数等、あらゆる角度から分析したが、審査結果が長引いている申請人に共通する事項は何一つなかった。オンラインシステムではログイン後に審査状況の状態が確認できるが、「審査中」のみの文言で、その次の段階は許可後の「発行待ち」あり、実質審査がどこまで進んでいるのかを確認することはできない。唯一確認する方法は在留管理情報部門や申請受付官署へ電話するしかない。 当職は標準処理期間である4週間を過ぎた申請についてのみ、週1回電話にて問い合わせを行った。2月中旬ころから最初の問い合わせを行い、週を追うごとにその対象人数が増えていくこととなった。 電話して分かったのは、進捗状況については「審査中」もしくは「最終段階」のみの2つしか情報を得られず、問い合わせたところで審査が早まる訳でもなく、基本的には「待つ」しかない。

さて、申請人の外国人の視点から考えると、4週間を過ぎたころからどのような心境になるのかは容易に想像できるところである。まして同一所属機関で働く他の外国人との情報共有が活発に行われている事から、当然に「自分の申請はなぜこんなにも時間がかかっているのか?」と首をかしげ始める。申請人本人へはあらかじめ2~4週間ほどはかかる見込みであると伝えてはあるものの、それ以上の期間が現実に経過すると、「不許可になるのでは」という不安が頭をよぎり、精神衛生上、大きなストレスを抱えたまま生活することになる。ごくわずかであったが、「ちゃんと申請したのか?」と当職の仕事ぶりに疑念を持たれる問い合わせを受けた。

当職の申請方法に問題があったのか?

その可能性はゼロではないであろう。新しいシステムで不慣れな点も多く、最初のうちは入力ミスであったり、必要事項を入力しなかったりという点も確かにあったが、所定の項目を満たしていないと申請前にエラーが出る仕様であり、現在の在留カードの情報については券面の内容と同一でないと、次の段階に進めないので、絶対に他の申請人と取り違えるミスをすることはない。申請処理がなされれば、あとは結果通知を待つしかないのである。

しかし、待つしかないという選択肢はあまりにも消極的過ぎる。当然電話で問い合わせて進捗状況を確認するほかないが、回を重ねるごとにこの問い合わせは、単なる審査状況を知りたい為の電話ではなく、結果通知を待たされていることに対する申請人サイドからの不安な思いの意思表明であることを暗に伝えることになった。最後の方はこちらの思いを察して頂いたのか、待たされていた審査については、すべて同日に結果通知されるという事となり、ほっとした。幸いすべての申請は許可処分となっているゆえ、担当審査官には感謝の意を表したいが、もし電話をしなければどうなっていたのか?という思いはある。

メリットについて

このオンラインシステムを利用する最大のメリットは窓口へ行かなくても良いという点であり、特に現在のコロナ禍において、不特定多数との接触を回避できるので、感染リスクを減らす上では効果的といえる。実際、申請人外国人より、この点に関しての感謝を多数受けた。また、混雑する入管に並ぶ必要もなく、時間の節約にもなる。

システム利用時の案内にも言及されている点であるが、 オンライン申請だからと言って、特段早く処理されるわけではない。 結果通知がメールでゆえに郵送よりも早いという利点はある。

さて、このオンラインシステムであるが、3月7日の日経新聞の記事によれば、今後は申請人個人がオンラインでできるようになるとの事。受付窓口の混雑緩和にますます拍車がかかるであろうが、入力方法などについての問い合わせが爆発的に増えると予想され、その対応を整備・強化しなければ、混乱が生じることになるであろう。いずれにせよ、今後どのような形でこのシステムが稼働・運用されていくのか注目していきたい。